自社の強み・弱みを把握してますか?実例編

みなさん、こんにちは。公認会計士の中田裕司(なかたゆうじ)です。

10月14日のブログ「自社の強み・弱みを把握してますか?」で、自社の強み・弱みを理解するためのセグメント別損益管理について紹介しました。

中小企業ですと、決算を締めるにもひと苦労で、なかなかセグメント別損益管理にまで手が回らないのが現状です。

一方、上場企業では、四半期ごとの決算発表で「セグメント情報」を開示することが義務付けられています。

今日は、10月28日に決算発表をしたサイバーエージェントの「セグメント情報」を紹介し、セグメント別損益管理の参考にしていただければと思います。

目次

セグメント情報とは?

セグメント情報を開示する際、日本では、「セグメント情報等の開示に関する会計基準」「セグメント情報等の開示に関する会計基準の適用指針」というルールに拠る必要があります。
(なお、以下において特に断りのない限り、「セグメント情報等の開示に関する会計基準」「セグメント情報等の開示に関する会計基準の適用指針」を総称して「セグメント会計基準」と記載します)

目的

「セグメント情報等の開示に関する会計基準」基本原則に次のような記載があります。

基本原則

4.セグメント情報等の開示は、財務諸表利用者が、企業の過去の業績を理解し、将来のキャッシュ・フローの予測を適切に評価できるように、企業が行う様々な事業活動の内容及びこれを行う経営環境に関して適切な情報を提供するものでなければならない。

出典:セグメント情報等の開示に関する会計基準(企業会計基準第17号)

堅苦しく書いていますが、「決算書だけでは会社が営む色んなビジネスの状況が見えず、投資家が投資していいか決められないから、個々のビジネスの状況を明らかにしてね」というのが、セグメント情報を開示する目的です。

開示する際のルールなので、投資家目線で書かれていますが、経営者の立場でも、決算書だけでは会社全体のことはわかるけど、個々のビジネスの状況が見えないのは同じなので、事業を継続するか、撤退するかを決めるものさしの1つとして、セグメント情報を利用するわけです。
(当然、セグメント情報だけ意思決定をするわけではありません)

定義

「セグメント情報等の開示に関する会計基準」事業セグメントの定義に、何をもってセグメントとするのかが以下のように記載されています。

事業セグメントの定義

6.「事業セグメント」とは、企業の構成単位で、次の要件のすべてに該当するものをいう。

⑴ 収益を稼得し、費用が発生する事業活動に関わるもの(同一企業内の他の構成単位との取引に関連する収益及び費用を含む。)

⑵ 企業の最高経営意思決定機関が、当該構成単位に配分すべき資源に関する意思決定を行い、また、その業績を評価するために、その経営成績を定期的に検討するもの

⑶ 分離された財務情報を入手できるもの

ただし、新たな事業を立ち上げたときのように、現時点では収益を稼得していない事業活動を事業セグメントとして識別する場合もある。

7.企業の本社又は特定の部門のように、企業を構成する一部であっても収益を稼得していない、又は付随的な収益を稼得するに過ぎない構成単位は、事業セグメント又は事業セグメントの一部とならない。

出典:セグメント情報等の開示に関する会計基準(企業会計基準第17号)

要約すると、

  • 収益・費用が発生する
  • 経営陣が、投資・撤退の意思決定をしたり、成績を評価したりする
  • 業績を把握できる

のすべてを満たすのが、「事業セグメント」です。

なお、収益が発生しない新規事業は「事業セグメント」になり得ますが、本社部門・管理部門は「事業セグメント」とはなりません。

「セグメント会計基準」は、経営者と同じ目線で開示することを要求していて、これを「マネジメントアプローチ」と呼びます。

開示

実際に「セグメント情報」を開示する際、どうやって、何を開示するのでしょうか?

どうやって開示する?

「セグメント情報等の開示に関する会計基準」報告セグメントに、どうやって開示するのかが以下のように記載されています。

報告セグメント

10.企業は、第6項から第9項に基づいて識別された事業セグメント又は第11項に基づいて集約された事業セグメントの中から、量的基準(第12項から第16項参照)に従って、報告すべきセグメント(以下「報告セグメント」という。)を決定しなければならない。

出典:セグメント情報等の開示に関する会計基準(企業会計基準第17号)

ここでは、「事業セグメント」をベースに「報告セグメント」を決めること、つまり「事業セグメント」=「報告セグメント」とは限らないことを知っていただければ十分です。

なぜ、「事業セグメント」=「報告セグメント」とは限らないのかというと、

  • 多数の事業セグメントがある場合、細かすぎて、かえって投資家の判断を誤らせる
  • 多数の事業セグメントがある場合、集約を認めて、セグメント情報を作成する企業の負担を軽減する

ことが挙げられます。

そうすると、「事業セグメント」→「報告セグメント」に集約する場合のルールはどうなんだ?ということになりますが、このブログで書くには長すぎるので、「セグメント情報等の開示に関する会計基準」第11項から第16項をご確認頂ければと思います。

「セグメント情報等の開示に関する会計基準」第11項から第16項を要約すると、

  • 似たような事業だったら集約していい
  • 売上 or 利益・損失の絶対値 or 総資産が、会社全体の数値の10%以上の「事業セグメント」は「報告セグメント」
  • 開示される「報告セグメント」が売上の75%以上になるようにする
    (例えば、セグメントごとの売上が、Aセグメント 40%、Bセグメント30%、その他30%という開示はダメ。報告セグメントの売上が70%しかない)

となります。

何を開示する?

「セグメント情報等の開示に関する会計基準」報告セグメントに、何を開示するのかが以下のように記載されています。

セグメント情報の開示項目

17.企業は、セグメント情報として、次の事項を開示しなければならない。

⑴ 報告セグメントの概要(第18項参照)

⑵ 報告セグメントの利益(又は損失)、資産、負債及びその他の重要な項目の額(第19項から第22項参照)並びにその測定方法に関する事項(第23項及び第24項参照)

⑶ 第19項から第22項の定めにより開示する項目の合計額とこれに対応する財務諸表計上額との間の差異調整に関する事項(第25項及び第26項参照)

出典:セグメント情報等の開示に関する会計基準(企業会計基準第17号)

ビジネスの紹介と、セグメントの利益や資産などの数値を開示すると理解していただければ十分です。

(3)は無視していただいて結構です。

なお、セグメント情報の開示は、連結財務諸表のみです。
(連結財務諸表を作成していない会社は個別財務諸表で開示)

ルールの詳細は、「セグメント情報等の開示に関する会計基準」第19項から第26項をご確認頂ければと思います。

セグメント情報の開示例

それでは、10月28日に決算発表したサイバーエージェントの決算短信を使って、実際のセグメント情報を紹介します。

出典:株式会社サイバーエージェント
2020年9月期決算短信

サイバーエージェントの「報告セグメント」は、

  • メディア事業(ABEMA、Ameba、タップル等)
  • ゲーム事業(スマホ向けゲーム事業等)
  • インターネット広告事業(広告代理事業・動画広告事業、AI事業等)
  • 投資育成事業(コーポレートベンチャーキャピタル事業、ファンド運営等)
  • その他事業(スマートフォンサービス事業、スポーツ事業運営等 ← Makuakeや町田ゼルビアはその他事業)

の5つです。

業績を見ると、売上が一番大きいのは、祖業であるインターネット広告事業(2,693億円)利益が一番大きいのはゲーム事業(303億円)、ニュースでよく報じられる「ABEMA」を含むメディア事業は、182億円の赤字です。

また、ゲーム事業で39億円の減損損失を計上しています。

もし、セグメント情報が開示されない場合、何が利益の源泉になっていて、あるいは損失が出ているのかがわかりませんが、こうして開示されることで会社の強み・弱みが明らかになります

余談ですが、サイバーエージェントの決算短信に、

1.経営成績等の概況

(1)当期の経営成績の概況

 2020年のインターネット広告市場は、新型コロナの感染拡大の影響を受け前年比0.5%増(注)が見込まれております。

 このような環境のもと、当社グループは、スマートフォン市場の成長を取り込む一方で、中長期の柱に育てるため「ABEMA」への投資をしつつ、・・・(以下、省略)

(4)今後の見通し

 2021年度の業績見通しは、引き続きスマートフォン市場の成長を取り込み連結売上高前期比4.5%増の5,000億円と見込んでおります。連結営業利益につきましては、インターネット広告事業、ゲーム事業等の収益貢献を見込むとともに、中長期の柱に育てるため引き続き「ABEMA」への先行投資をしつつマネタイズを強化し、またゲーム事業におけるボラティリティ等を考慮した上、300億円~350億円とレンジにて予想。・・・(以下、省略)

出典:株式会社サイバーエージェント 2020年9月期 決算短信

とあり、業績が安定しているインターネット広告事業とゲーム事業の黒字を原資に、赤字の「ABEMA」を中長期の柱にするための投資を継続することが明らかになっています。

10月14日のブログ「自社の強み・弱みを把握してますか?」で紹介した「PPM分析」に当てはめると、「インターネット広告事業」「ゲーム事業」→金のなる木「メディア事業」→問題児ととらえていると思います。

中小企業の皆様も、事業セグメントごとの経営成績を把握すると、会社の強み・弱みが見え、今後の経営方針を決めるのに役に立ちますので、「セグメント別損益管理」をしてみてはいかがでしょうか。
(事業セグメントごとの実情を把握できれば、上場企業が開示するほどのレベルでなくても大丈夫です)

まとめ

「セグメント別損益管理」の実例を上場企業の決算短信を使って説明しました。

上場企業は一定のルールに基づき、「セグメント情報」を開示しています。

中小企業の方は、上場企業のような開示は不要ですが、会社の強み・弱みを把握して、今後の経営方針を決めるために、「セグメント別損益管理」をした方がいいです。

編集後記

昨日、編集後記で書いたチャンピオンズリーグ リバプール対ミッティラン戦は、リバプールが2対0で勝利しました。

残念ながら、CBでファン・ダイクの代わりだったファビーニョがけがしてしまい、今後が不透明です。

代わりに出場したアカデミー所属のリース・ウィリアムズが奮闘したそうです。

主力がいなくなっても、代わりに出る選手が活躍するというのは、いい組織なんだなぁと思いました。


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