みなさん、こんにちは。クラウド会計専門公認会計士の中田裕司(なかたゆうじ)です。
11月2日のブログ「決算書をざっくり説明してみました vol.1」から数えて4回目を迎えた「決算書をざっくり説明してみました」シリーズですが、前回、前々回と貸借対照表について紹介しました。
貸借対照表は、「集めたお金」である負債・純資産と「集めたお金で投資した結果」である資産を示すものでした。
一方、損益計算書は、1年間の事業活動の結果、「投資して得られた成果」「成果を得るための犠牲」がいくらだったかを示すものです。
そして、「投資して得られた成果」「成果を得るための犠牲」がいくらだったかだけでなく、これらの差額が重要です。
本日は、損益計算書の「投資して得られた成果」「成果を得るための犠牲」、これらの差額をご紹介します。
「成果」「犠牲」「差額」とは?
「投資して得られた成果」とは?
損益計算書が示すものの1つ、「投資して得られた成果」はどういうことでしょうか?
「企業がなぜ投資するのか?」から考えてみましょう。
世の中には、いろんなビジネスがありますが、どのビジネスでも、「投資」は欠かせません。
「投資」の対象は、モノ・サービス・設備・人材育成などさまざまありますが、「企業がなぜ投資するのか?」といえば、会社を存続させるためであり、会社を存続させるためにはお金が必要です。
そして、お金を得る手段の一つが「売上」を得ることです。
個人に置き換えると、人は食事をするのは生きるためであり、生きるためにはお金が必要で、お金を得る手段として、働いてお給料をもらうわけです。
(食事の目的が生きるためだけとは限りませんが、あくまで例えですのでご容赦頂ければ幸いです)
少し話がそれましたが、会社存続のために「投資して得られた成果」が「売上」です。
(本来、「投資して得られた成果」を、会計用語では「収益」、税務用語では「益金」といいますが、当ブログでは「売上」とします)
「成果を得るための犠牲」とは?
前のセクションでは、「投資して得られた成果」としての「売上」を紹介しました。
ですが、「売上」を得るために、何の犠牲も払わないことがあるでしょうか?
残念ながらそんな虫のいい話はなく、「売上」を得るためには犠牲を払う必要があります。
個人が労働という犠牲を提供し、お給料をもらうのと同じです。
「成果を得るための犠牲」には、従業員に払うお給料やいろいろなモノ・サービスがあります。
「成果を得るための犠牲」のことを「経費」といいます。
(本来、「成果を得るための犠牲」を、会計用語では「費用」、税務用語では「損金」といいますが、当ブログでは「経費」とします)
差額?
冒頭、「『投資して得られた成果』『成果を得るための犠牲』がいくらだったかだけでなく、これらの差額が重要です」と記載しましたが、なぜでしょうか?
「投資して得られた成果」ー「成果を得るための犠牲」=「売上」ー「経費」ですが、「売上」と「経費」の差額を出すことで、1年間の事業活動の結果がよかった・悪かったのかが分かるので、差額が重要です。
(「売上」ー「経費」というのが何度も登場しますので、こちらの式を頭に入れておいて頂ければと思います)
「売上」ー「経費」が重要なのはわかったけど、「売上」ー「経費」をどう見ていくのでしょうか?
「売上」ー「経費」≧0であれば、払った犠牲以上に成果を得られた状況なので、会社としてはいい結果と言えます。
一方、「売上」ー「経費」<0であれば、得られた成果以上に犠牲を払っているので、会社としては悪い結果と言えます。
「売上」「経費」を単体で見ただけでは、1年間の事業活動の結果がよかったのか、悪かったのかがわかりませんが、「売上」ー「経費」を見ることで、1年間の事業活動の結果がよかった・悪かったのかが見えてきます。
ちなみに、「売上」ー「経費」≧0のときを「利益」、「売上」ー「経費」<0のときを「損失」と言います。
「利益」「損失」には、種類がありますので、次のセクションで紹介します。
「利益」には種類がある?
5つの「利益」
先ほどは、「売上」ー「経費」で「利益」を計算することを説明しました。
しかし、「売上」ー「経費」だけでは、「どんな理由で、事業活動の結果がこうなった」を理解することができません。
そのため、会計のルールでは、「利益」の種類を、次の5つに分類しています。
(「損失」も5種類ありますが、「利益」→「損失」に置き換えるだけですので、この後は「利益」と表現します)
- 売上総利益
- 営業利益
- 経常利益
- 税引前当期純利益
- 当期純利益
5つの順番が重要です。
以下にて、5つの利益を説明いたします。
売上総利益
売上総利益を見ていくのにあたり、「売上」ー「経費」の「経費」をもう少し細かく見ていくことにしましょう。
「経費」の中には、お客様に売るために買った商品や作った製品があります。
これらを「売上原価」といいますが、「経費」を「売上原価」とそれ以外に分けた上で、
売上総利益=「売上」ー「売上原価」で計算します。
売上総利益は、「自社の商品・製品を売ったことによるもうけ」と言えます。
なお、売上総利益のことを、「粗利益」「粗利」ということがあります。
営業利益
売上総利益のセクションで、「経費」を「売上原価」とそれ以外に分けるとしましたが、営業利益を見ていくのにあたり、「経費」のそれ以外、つまり、「売上原価」ではない「経費」が重要です。
「売上原価」ではない「経費」を「販売費及び一般管理費」、略して「販管費」といいます。
「販管費」は自社商品・製品を売るためのコストです。
販売費の例として、営業職員へのお給料、自社商品・製品を販売するための広告宣伝費などがあります。
一般管理費の例として、経理・総務部門職員のお給料、社内のシステム手数料などがあります。
営業利益=「売上総利益」ー「販管費」で計算します。
営業利益は、「本業のもうけ」と言えます。
経常利益
経常利益を見ていくのにあたり、
- 本業の活動 or 本業以外の活動で発生したものか?
- いつも発生する or めったに発生しない?
を考えることが大事です。
本業の活動で発生したものは、先ほどの営業利益で計算されています。
なので、経常利益の計算では、本業以外の活動で発生したものを反映させます。
また、いつも発生するものか、めったに発生しないかのうち、いつも発生するものを経常利益の計算に反映します。
本業以外で発生し、いつも発生するものと言えば、何でしょうか?
数をあげればきりがないですが、本業以外と言えば、次の2つを考えていただければ十分です。
- 投資に関するもうけ
- 資金調達に関する犠牲
投資に関するもうけと言えば、銀行預金をして利息を得たり、株式に投資して配当金を得たりします。
会計のルールでは「営業外収益」と言います。
資金調達に関する犠牲と言えば、銀行からお金を借りた際に利息を支払ったり、株式を発行した際に発行手数料を支払ったりします。
会計のルールでは「営業外費用」と言います。
これらを反映して、
経常利益=「営業利益」+「営業外収益」ー「営業外費用」で計算します。
経常利益は、「ふつうに活動した結果としてのもうけ」と言えます。
税引前当期純利益
税引前当期純利益は、経常利益で見た視点の1つ、いつも発生するものか or めったに発生しないかを考える必要があります。
いつも発生するものは経常利益に反映していますので、税引前当期純利益の計算では、めったに発生しないものを反映します。
めったに発生しないものと言うと、幅が広いのですが、例えば、次のようなものがあります。
- 株式を売ったことによるもうけ(マイナスの場合もあります)
- 災害によって建物がこわれたときの犠牲
めったに発生しないことで得られたもうけを「特別利益」、めったに発生しないことで発生した犠牲を「特別損失」と言います。
税引前当期純利益=「経常利益」+「特別利益」ー「特別損失」で計算され、「税金を差し引く前のもうけ」と言えます。
当期純利益
税引前当期純利益が「税金を差し引く前のもうけ」でしたが、察しのいい方はもうお気づきですよね。
当期純利益=「税引前当期純利益」ー「税金」で計算されます。
ただ、気をつけないといけないのは、税金ならなんでもかんでもいいわけではありません。
税金にもいろいろ種類がありますが、ここで言う税金は
- 法人税(国に納めるもの)
- 住民税(地方自治体に納めるもの)
- 事業税(地方自治体に納めるもの)
が当てはまります。
例えば、印紙税、固定資産税のような税金は当てはまりません。
(印紙税、固定資産税は「販管費」です)
まとめ
損益計算書は、投資により得られた成果である「売上」と成果を得るための犠牲「経費」の差額として、「利益(損失)」が計算され、1年間の事業活動の結果を示す上で「利益」は重要です。
「利益」には、どういう活動によって得られたもうけなのかを表現すべく、5種類の利益、「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」があります。
なお、次回は、「株主資本等変動計算書」を紹介します。
編集後記
今日は、プロ野球では、福岡ソフトバンクホークスが、Jリーグでは、川崎フロンターレが、それぞれ優勝しました。
どちらにも共通しているのは、圧倒席な戦力で他を寄せつけなかったことです。
わたしも他を寄せ付けないくらいの圧倒的な能力を身につけないといけないなと思った今日このごろです。
福岡ソフトバンクホークスの関係者の皆様、川崎フロンターレの関係者の皆様、優勝おめでとうございます。