みなさん、こんにちは。クラウド会計専門公認会計士の中田裕司(なかたゆうじ)です。
「2022年1月1日に電子帳簿保存法が改正されました」と言って、ピンとくる方はいらっしゃいますでしょうか?
クラウド会計ソフトを提供するfreeeの調査によると、半数以上の方は電子帳簿保存法(以下、「電帳法」)の改正そのものを知らず、改正内容をご存じの方が2割ほどという結果が出ました。
また、法律の改正に向けて対応している事業者も半数ほどで、知られていない&対応進んでいない状況が明るみになりました。

今日は、改正された電帳法の概要を紹介し、クラウド会計ソフトのfreee・MFクラウドを使われている方向けに、法律に対応するための留意事項を紹介します。
なお、電帳法の概要は、イメージをつかんでいただく趣旨で、法律の用語とは異なる言葉で表現しております。
正確な法律の用語や実際にどのように適用するのかについては、税務署、あるいは、顧問税理士の方にご確認頂ければと思います。
なんで、電帳法が改正されたの?
1998年に電帳法が制定されて以来、何度か改正はありました。
しかし、税務署の承認が必要とか、過度なチェック体制を構築するとか、使い勝手のよい制度ではなく、ほとんど浸透しておらず、紙資料を保存する企業が大半でした。
そんな折、2020年に新型コロナウイルス感染症拡大で、経理がテレワークできないとか、紙資料を見ながら、手作業で入力するといった生産性の悪さなどが叫ばれるようになりました。
こうした紙文化や手作業の入力ではなく、効率的にデータを収集、分析、活用できる環境を用意する必要があると考えた政府は、電帳法を使い勝手のよい制度に改正し、最終的には、企業の付加価値向上につながることを意図したわけです。
改正された電帳法の内容は?
法律の改正の話をするときは、改正前と改正後の比較をするのが常道です。
しかし、改正前の内容を知ったところで、もう使わないので、このブログでは、改正前の法律の内容については割愛し、改正後の内容、つまり、「いまどうすればいいの?」にフォーカスして紹介します。
対象
電帳法が対象とするのは、次の4つです。
- 帳簿・・・仕訳帳、売掛金元帳、固定資産台帳、売上帳など
- 書類・・・決算書、棚卸表、自社が発行した請求書や領収書の控えなど
- スキャナ保存・・・取引先から入手した紙の請求書や領収書などをスキャンしたもの
- 電子取引・・・電子データのみで受け渡しした取引
4つの対象がありますが、電帳法の話をすると、どの対象のことを言っているのか分からなくなることがあると思います。
(実際、わたしはありました。。。)
そこで、4つの対象を、次の2つの視点で整理しました。
- 「自社で作成するもの」or「主に取引先から入手するもの」
- 「紙保存が原則だけど、データ保存してもよい」 or 「データ保存がマスト、紙保存はNG」
頭の片隅にこの視点を入れていただくと、迷子にならないかなと思います。
①の視点だと、
- 自社で作成するもの→「帳簿」「書類」
- 主に取引先から入手する→「スキャナ保存(※1)」「電子取引」
と分類されます。
②の視点だと、
- 「紙保存が原則だけど、データ保存してもよい」→「帳簿」「書類」「スキャナ保存」
- 「データ保存がマスト、紙保存はNG」(※2)→「電子取引」
と分類されます。
※1:取引先から入手する紙の請求書等だけでなく、自社が紙で作成した請求書や領収書の控えをスキャナ保存する可能性もあるので、「主に」取引先から入手としていますが、現実には、請求書や領収書を紙で作成するケースは多くなく、話を単純化するため、取引先から入手する紙の請求書等を念頭においていただければと思います。
※2:「データ保存がマスト、紙保存はNG」は、24/1/1から適用されます。23/12/31までは紙保存もOKです。
保存するためにやらなきゃいけないこと
4つの対象のそれぞれについて、保存するためにやらなきゃいけないことをスライドで紹介します。
freee・MFクラウドをお使いの方が気をつけること
freee・MFクラウドを使っている方向けに、電帳法に対応するために気をつけることを紹介します。
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ソフトの設定
電子帳簿保存法に対応するために、各ソフトで設定が必要です。
freeeの場合、設定>事業者の設定>詳細設定>取引関連設定>電子帳簿保存法対応の「使用する」を選択し、「保存」をクリックしてください。
(デフォルトは「使用しない」になっています。意外と忘れやすいのが、選択した後の「保存」です)



MFクラウドの場合、各種設定>事業者>電子帳簿保存法の「仕訳履歴保存機能を利用する」「スキャナ保存機能を利用する」にチェックを入れます。
なお、仕訳履歴保存機能の選択は、1件でも仕訳が登録されると後から変更できませんので、改正法を適用する初年度のときはご注意ください。


事務処理マニュアル・規程の作成
事務処理マニュアル・規程を作成しましょう。
事務処理マニュアルのひな型は国税庁のホームページにありますし、freeeユーザーの方は、freee会計のページにひな型が用意されています。
帳簿
最低限やらなければいけないこと以外で、特に気をつけることはありません。
(もちろん、正しい帳簿付けをすることが前提ですが。。。)
ただし、優良な電子帳簿の届け出をするときには、注意が必要です。
本ブログ執筆日現在、freeeは、すべての帳簿が2022年中に優良な電子帳簿としての機能を提供する予定となっています。
また、MFクラウドは、固定資産台帳が優良な電子帳簿としての要件を満たしておらず、固定資産台帳を除外して届け出る必要があります。
優良な電子帳簿については、今後アップデートがありましたら、随時更新します。

書類
やらなきゃいけないことを淡々とやっていただく以外に、特に気をつけることはありません。
強いて言えば、書類のうち、決算書(貸借対照表や損益計算書など)を紙で出力して、後述のスキャナ保存をすることはできないことに気をつけるくらいでしょうか。
(freeeやMFクラウドには決算書作成機能があり、ソフトで作った決算書を、あえて紙で出力してスキャナ保存する必然性はないのですが。。。)
スキャナ保存
freeeであれば「ファイルボックス」、マネーフォワードクラウドであれば「クラウドBox」を使えば、スキャナ保存は法律に対応する形で保存することができます。
ですが、マネーフォワードクラウドの「クラウドBox」は少々気をつける必要があります。
スキャンデータを直接「クラウドBox」にアップしても、法律の要件を満たしません。


では、どうすればよいかと言うと、マネーフォワードクラウド会計・確定申告で、仕訳入力時に、証憑添付機能を使って、スキャンデータをアップロードします。

そうすると、「クラウドBox」に、法律に対応する形でスキャンデータが保存されます。
なお、仕訳入力時に、摘要欄に「取引先名」を入れてください。
というのも、仕訳入力時の仕訳No.、日付、金額、摘要がクラウドBoxに連携されますが、仕訳入力時に取引先名を入力しないと、アップロードしたファイルに、日付、金額、取引先名の3つが必要という要件を満たさないからです。
仕訳入力時に取引先名を入れるのは面倒ですが、仕訳と証票(スキャンデータ)が紐付いているので、税務調査や監査法人の監査を受けるときや後で仕訳の確認をするときに楽ですし、むしろ親切だなと思いました。
電子取引
電子取引は、色んなパターンがありますが、よくあるのが、銀行・クレカ・決済サービス(Amazonなど)の明細を取得するケースとPDFファイルをやり取りするケースだと思います。
銀行・クレカ・決済サービスの明細
銀行・クレカ・決済サービスの明細とクラウド会計ソフトと連携させて、明細を取得した場合、freee・MFクラウドともに、取得した明細を削除することができませんので、訂正削除ができないという要件を満たします。
ですので、普通に同期すれば、意識することなく電帳法に対応できます。
PDFファイル
PDFファイルの場合は、先ほどのスキャナ保存と同じで、freeeであれば「ファイルボックス」、MFクラウドであれば「クラウドBox」を使ってアップロードすれば、法律の要件を満たした保存が可能です。
(アップロードするときに、日付、金額、取引先名の入力が求められます)
2つの例をあげましたが、電子取引には色んなパターンがあるので、パターンを整理し、対応方法を考える必要があります。
ただ、一つ言えることは、クラウド会計ソフトが用意しているストレージ(「ファイルボックス」や「クラウドBox」)を活用して、一元管理したほうが、結果として楽です。
できれば、仕訳とデータを紐付けると良いです。(freeeであれば「ファイル添付」、MFクラウドであれば「証憑添付」を使う)
まとめ
電帳法の概要とfreee・MFクラウドをお使いの方が気をつけることを紹介しました。
使いやすくなったと言っても、急に変えられるものではないかもしれません。
いきなり100点を取ることはできませんし、その必要もないので、できるところから対応すれば良いと思います。
編集後記
オミクロン株の流行で、感染者数が激増しています。
まもなく確定申告が始まりますが、期限延長する気配がありません。
正気ですか?