みなさん、こんにちは。クラウド会計専門公認会計士・税理士の中田裕司(なかたゆうじ)です。
何かサービスを購入するとき、「年額〇〇円一括払い」で支払ったり、お客様に対する売上で「年額△△円一括入金」でお金を頂いたりすることはありますか?
年額を一括払いというのは、お金を頂く側とすると、資金繰り的には助かりますし、お金を払う側も長期的にお付き合いするときは、月額よりも単価が安くなることが多いので、お互いWin-Winですよねって、たしかにそうなんですが、今日はそんな事を言いたいわけではありません。
「年額〇〇円一括払い」「年額△△円一括入金」というときに、どういう会計処理をされていますか?
よくあるのが、全額を費用・売上にするというパターンですが、これは原則NGです。
なぜ、NGなのかは、のちほど紹介するとして、前払費用(費用の場合)、前受収益(売上の場合)を使って会計処理するのが正解です。
そして、前払費用、前受金で処理するとき、エクセルで前払費用、前受収益の残高を管理して、その情報を使って仕訳入力する会社さんが多いです。
ですが、freeeのとあるアプリを使えば、前払費用や前受収益をエクセルで管理しなくてもよくなり、かつ、記帳も自動でしてくれます。
そのアプリの名は、「前受/前払入力アプリ」といいます。
今日は、freeeの「前受/前払入力アプリ」で、かんたんに、かつ、正しく会計処理できることを紹介します。
前払費用や前受収益って何?
「前受/前払入力アプリ」の前に、「前払費用」や「前受収益」がどういうものかを紹介します。
前払費用
前払費用は、企業会計原則 注解 注5にて、次のように定義されています。
(1) 前払費用
前払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価をいう。従って、このような役務に対する対価は、時間の経過とともに次期以降の費用となるものであるから、これを当期の損益計算から除去するとともに貸借対照表の資産の部に計上しなければならない。また、前払費用は、かかる役務提供契約以外の契約等による前払金とは区別しなければならない。
企業会計審議会 「企業会計原則 注解(最終改正 昭和57年4月20日)」 注5 より抜粋
文章が長ったらしくて、見る気が失せますが、大事なポイントは次の3つです。
- 継続して役務の提供を受ける
- 提供されていない役務に対し支払われた対価
- 時間の経過とともに次期以降の費用となる
文章だけですとイメージしづらいので、次のスライドで数値例を使って紹介します。
前受収益
前受収益は、企業会計原則 注解 注5にて、次のように定義されています。
(2) 前受収益
前受収益は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を行う場合、いまだ提供していない役務に対し支払を受けた対価をいう。従って、このような役務に対する対価は、時間の経過とともに次期以降の収益となるものであるから、これを当期の損益計算から除去するとともに貸借対照表の負債の部に計上しなければならない。また、前受収益は、かかる役務提供契約以外の契約等による前受金とは区別しなければならない。
企業会計審議会 「企業会計原則 注解(最終改正 昭和57年4月20日)」 注5 より抜粋
こちらも長ったらしい文章で見る気が失せますが、よくよくご覧いただくと、何か気付きませんか?
サービスを行う側=売上を上げる側なので、継続して役務の提供を行う、提供していない役務に対して支払いを受けた、時間の経過とともに次期以降の収益となる。。。ということで、そうです、「前受収益」は、「前払費用」の逆バージョンなんです。
先ほどのスライドは、支払う側の立場で紹介しましたが、180度見方を変えて、支払いを受ける側と考えると、X1年度の収益は90,000円、X2年度の収益は30,000円となるわけです。
「前受/前払入力アプリ」の使い方
ここから、今日の本題、「前受/前払入力アプリ」の紹介です。
準備と利用に分けて紹介します。
アプリを利用するための準備
「前受/前払入力アプリ」はfreeeのアプリストアにあるアプリで、次のようにして利用することができます。
会計freeeの「設定」>「連携アプリ設定」をクリックし、アプリストアへ遷移

アプリストア画面が表示されたら、画面上部の検索窓に「前払」と入力し、Enterキーを押す
(「前払」ではなく、「前受」と入力しても良い)

- 「前受/前払入力アプリ」が表示されたら、「前受/前払入力アプリ」を選択
- 画面右寄りに表示される「アプリを利用する」をクリック
- 「前受/前払入力アプリ」を利用しますか?と聞かれるので、「アプリを利用する」をクリック
- アプリを連携開始画面が表示されるので、「許可する」をクリック




アプリの利用方法
アプリの利用準備ができましたら、アプリを使ってみましょう!
なお、例として取り上げる取引は、次のとおりです。
2020年12月に、2020年12月〜2021年11月までの期間で、ソフトウェアの保守サービス契約を締結し、1年分132,000円(税込)を支払い、取引は「自動で経理」で登録済みである。
- 「前受/前払入力アプリ」画面に表示される「取引一覧」を選択
- 「取引一覧」より前払 or 前受処理したい取引を選択


選択した取引について、「取引の詳細」が表示されたら、「按分期間」「按分開始月」「振替先勘定科目」「振替先税区分」を選択し、登録します。
今回の例では、2020年12月から1年間の保守サービス契約なので、
- 「按分期間」→12ヶ月
- 「按分開始月」→2020年12月
- 「振替先勘定科目」→支払手数料
- 「振替先税区分」→課対仕入10%
を選択し、登録します。

「前受/前払入力アプリ」に入力した内容を確認したい場合、STEP2の登録後に表示される「+更新が完了しました」の「取引詳細はこちらよりご確認ください」の「こちら」をクリックします。
クリックすると、取引画面に「振替日」「振替後勘定科目」「振替金額」が表示され、「前受/前払入力アプリ」に入力した内容を確認することができます。
また、取引画面下部に仕訳形式プレビューが表示されるので、仕訳を確認することもできます。



今回は、支払取引で、前払費用のケースを紹介しましたが、収入取引で、前受収益のケースも上記のステップと同様にできます。
「前受/前払入力アプリ」を使用すると、月次計算を適正化でき、かつ、煩雑なエクセル管理が不要になりますので、ぜひお試し頂ければと思います。
まとめ
年間一括払い(一括入金)の場合、全額が費用(売上)になるわけではなく、複数の会計年度にわけて費用(売上)を計上する必要があります。
複数の会計年度にわけて費用(売上)を計上するために、「前受/前払入力アプリ」を使うことで、煩雑な管理をすることなく、月次決算を適正化することができます。
編集後記
昨日は、1年で最も日の短い「冬至」だったので、お風呂にゆずを入れてみました。
(効果があるのかどうか分かりませんが)
よく眠れたので、良しとします!
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