みなさん、こんにちは。クラウド会計専門公認会計士の中田裕司(なかたゆうじ)です。
新聞やニュースで報じられている通り、2021年1月7日に、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の1都3県を対象地域として、特措法による緊急事態宣言が発令されることになりました。
今回の緊急事態宣言は、飲食店を対象とした営業時間の時短要請ですが、2020年4月に発令された緊急事態宣言では、主に飲食店など人が集まる可能性が高い業種について、緊急事態宣言期間中の休業を要請するものでした。
今回は時短要請なので、前回のような休業要請とは異なりますが、一部報道では、今後特措法を改正し、休業要請に関する権限を強化することが見込まれます。
今日は、前回の緊急事態宣言下における営業停止時の会計処理を振り返り、特に前回の緊急事態宣言解除以降、まだ決算を迎えていない企業様は、決算整理等での修正をご検討頂ければと思います。
営業停止時の会計処理について、参考になるものがあります
2020年4月に、日本公認会計士協会から「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その4)」(以下、「留意事項」とします)が出されました。
こちらは、監査法人が上場企業などの監査をするにあたり留意すべき事項をとりまとめたもので、会計に関するルールとは異なりますが、会計処理を考えるにあたり参考になるものと思いますので共有させていただきます。
留意事項において、 次のような考え方が示されています。
新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために政府や地方自治体による要請や声明等により、例えば、被監査企業が店舗の営業を停止又はイベントの開催を中止したときに、当該営業停止期間中に発生した固定費や、当該イベントの開催の準備及び中止のために直接要した費用は、臨時性があると判断される場合が多いと考えられる。したがって、その場合は、監査上、損益計算書の特別損失の要件を満たし得るものとして取り扱うことができると考えられる。
また、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために政府や地方自治体による要請や声明等により、被監査企業の工場が操業を停止又は縮小したときの異常な操業度の低下による原価への影響についても、臨時性があると判断される場合が多いと考えられる。したがって、その場合も、監査上、損益計算書の特別損失の要件を満たし得るものとして取り扱うことができると考えられる。
2020年4月22日付 日本公認会計士協会 「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その4)」より抜粋
要約すると、 営業停止→営業停止期間中の費用は臨時→特別損失と言うことになります。
これだけはおさえておきたい会計処理
営業停止時の会計処理として、おさえておきたい会計処理は、家賃・休業手当・工場や機械の減価償却費・各種給付金です。
家賃・休業手当・工場や機械の減価償却費
家賃・休業手当・工場や機械の減価償却費については、上記の留意事項に示された考え方にもとづくと、
- 営業停止中に発生した家賃は、臨時だから特別損失
- 営業停止中に支払った休業手当は、臨時だから特別損失
- 営業停止中の工場や機械の減価償却費は、臨時だから特別損失
なお、休業要請に基づかなかったり、コロナウィルスによる業績不振でなかったりする場合には、臨時とはならず、特別損失ではありませんので、留意して頂ければと思います。
各種給付金
営業停止に伴い、雇用調整助成金、家賃支援給付金、地方公共団体の休業要請協力支援金などがあると思います。
これらは、売上ではありませんので、営業利益より下の営業外収益や特別利益に計上されることになりますが、前述の営業停止時の家賃等を特別損失で処理するのであれば、各種給付金は特別利益で計上すべきでしょう。
(前述の営業停止時の家賃等は、金額が僅少でしたら営業外費用となることもあります。その場合は、各種給付金も営業外収益で計上すべきでしょう)
なお、給付が確定した段階で計上する必要があり、入金時に処理することのないようにして頂ければと思います。
上場企業における事例
上場企業が作成した有価証券報告書の事例から、どのように表示しているかを見ていきます。
株式会社オリエンタルコンサルタンツホールディングス
株式会社オリエンタルコンサルタンツホールディングスでは、次のように表示しています。
(株式会社オリエンタルコンサルタンツホールディングス 第15期有価証券報告書より抜粋)
従業員への休業手当等を臨時損失として特別損失に計上し、特別損失に対応する助成金等を特別利益に計上しています。
株式会社マサル
株式会社マサルでは、次のように表示しています。
(株式会社マサル 第65期有価証券報告書より抜粋)
こちらの会社では、休業補償金を営業外費用として計上しています。
給付金を受け取ったかどうかは不明ですが、特別利益がないことから、仮に給付金を受け取っていたとすれば、営業外収益のその他に含まれているものと思われます。
まとめ
営業停止時における固定費や給付金の会計処理は、特別項目で処理することが出来ます。
仮に特別項目で処理しないとしても、最終利益は変わりませんが、金融機関から融資を受ける際に影響を受ける可能性があるので、可能な限り、特別項目で処理することをオススメします。
編集後記
今日、とある買い物をLINE Payで決済したところ、マイナポイントが上限(5,000P)に達したとのお知らせがありました。
決済額の25%がマイナポイントとなるため、対象となる決済が20,000円に達したわけですが、半年もたたないうちにもう上限に達するのって早いんでしょうかね?