NHK受信料値下げを考える

みなさん、こんにちは。freee専門公認会計士・税理士の中田裕司(なかたゆうじ)です。

2021年1月17日付 産経新聞 THE SANKEI NEWSに、「 <独自>NHK受信料、恒久的に値下げ義務付け 剰余金充当…総務省、法令改正へ」という記事が掲載されていました。

同記事には、

改正案では、NHKが積み立てた剰余金のうち、一定水準を超えた部分を受信料値下げの原資とすることや、剰余金が一定水準を超えながら、受信料を値下げしない場合、理由を視聴者に説明することを義務付ける項目が盛り込まれる。

2021年1月17日付 産経新聞 THE SANKEI NEWS「 <独自>NHK受信料、恒久的に値下げ義務付け 剰余金充当…総務省、法令改正へ」より抜粋

今秋には省令を改正、NHKの経営安定上必要な財務の水準や、値下げを実施する基準となる剰余金の積立額などを定める。政府関係者は「税金などは余ったら還付が当たり前だが、受信料にはこうした仕組みがなかった。それはおかしいということ」と話す。

2021年1月17日付 産経新聞 THE SANKEI NEWS「 <独自>NHK受信料、恒久的に値下げ義務付け 剰余金充当…総務省、法令改正へ」より抜粋

NHKの前田晃伸会長は13日、経営効率化などで生まれた剰余金など約700億円を原資とした5年度の受信料値下げ方針を発表した。衛星放送を含む契約者のみを対象とした場合、月額300円程度に当たる。一方で財政安定上、約800億円の剰余金を留保したいとの考えも示した。

2021年1月17日付 産経新聞 THE SANKEI NEWS「 <独自>NHK受信料、恒久的に値下げ義務付け 剰余金充当…総務省、法令改正へ」より抜粋

とありました。

これまでも、 NHKの受信料は、世論の批判にさらされ、自民党政権も値下げを望んでいるとの報道もありましたが、法律上の手当として、値下げをする義務をNHKに負わせることになりそうです。

ところで、みなさんは、NHKの決算書をご覧になったことがあるでしょうか?

折角の機会ですので、NHKの決算書に触れつつ、NHK受信料の値下げについて考えてみたいと思います。

目次

NHKの決算書

NHKは、放送法第74条により、毎年、財務諸表を作成することが求められています。

NHKのWEBサイトを見ると、年度決算(単体・連結)と中間決算(単体・連結)の情報が掲載されていますが、放送法の規定により作成しないといけないのは、単体の年度決算のみで、中間決算と連結の年度決算は任意で作成しているようです。

話を戻して、直近では令和2年度中間決算の情報が掲載されていますので、ここからは、令和2年度中間決算を見ていきたいと思います。

貸借対照表

まずは貸借対照表から。

単体決算の中間貸借対照表を見ると、 総資産1兆2,590億円のうち、流動資産(4,787億円)と有形固定資産(4,632億円)だけで、総資産のおよそ3/4を占めます。

流動資産は、4,700億円のうち、有価証券(3,600億円)と現金預金(745億円)が大半で、有形固定資産は、主に、放送局などの建物1,649億円、放送設備などの機械装置1,554億円です。

出資その他の資産が1,338億円ありますが、913億円が長期保有の債券です。

また、特定資産として、建設積立資産が1,694億円がありますが、すべて債券で、純資産に同額の建設積立金が計上されています
(渋谷のNHK放送センターの建て替えに備えた積立金のようです)

NHKの資産の大半は、現金預金、有価証券、放送局などの建物、放送設備と言ってもいいでしょう。
(財産目録に資産の内容が記載されています)

負債を見ると、流動比率(=流動資産/流動負債)が185%ですので、支払能力は十分です。
(流動比率が100%を下回ると、支払能力が低いと判断されます)

繰越剰余金も1,671億円ありますので、政権もここを取り崩して値下げの原資にすることを考えているようです。

連結決算も単体決算と似たような財務構造をしていますが、流動資産、出資その他の資産、繰越剰余金の連単倍率(=連結/単体)が高くなっていますので、子会社でも過去に計上した利益が蓄積されており、十分な預金や債券などを保有している可能性があります。
(なお、連結の繰越剰余金は、決算書の連結剰余金ー建設積立金で算出したものです)

損益計算書

次に損益計算書です。

経常事業収入の98%は受信料です。
(当然といえば当然ですよね)

経常事業支出は、主に国内放送費(≒番組制作費等)(1,378億円)、給与(554億円)、減価償却費(415億円)、契約収納費(296億円)、退職手当・厚生費(270億円)ですが、制作費以外だと、人件費が結構かかっていますね。
(契約収納費は収納の外注費で、大半が収納スタッフの人件費と考えられます)

中間決算時点では、単体378億円、連結359億円の経常事業収支差金(≒営業利益)を計上しています。

連単倍率が1に近いので、連結損益計算書に占めるNHK本体の影響が大きく、収支差金の連単倍率が1を割り込んでいるので、令和2年度については、グループ会社で利益を出していないものと思われます。

収支計画(単体)を見ると、マイナス148億円の経常事業収支差金を予算額としているのですが、現状では、逆の動きをしています。

疑問に感じること

剰余金の水準をどうするの?

現時点で、単体1,600億円、連結2,500億円を超える剰余金があり、どこまで下げれば適正なのかが不明ということもありますが、わたしが気になるのは、単体決算だけを考慮して剰余金の水準を決めて、これをベースに値下げをいくらにするかを決めてしまわないかという点です。

放送法で作成が義務付けられている財務諸表が単体決算だけで、連結決算は任意です。

法律で剰余金の水準を決めるとなると、任意の連結財務諸表を根拠にするわけにもいかず、単体決算の剰余金だけを考慮して剰余金の水準を決めることになります。

やろうと思えば、NHK本体であえて過大に損失を計上し、剰余金の水準を下げて、その一方で、グループ会社で利益を多く計上し、連結決算で剰余金を溜め込んで、個別決算で剰余金の水準が一定水準になったので、値下げできませんと言うこともできるわけです。

連結決算の開示もされ、決算書を見れば一目瞭然ですが、グループ会社を使って利益を溜め込もうと思えば出来てしまうので、本来はもっと値下げできるのにということにもなりかねません。

個別決算だけで剰余金の水準を決めずに、連結決算ベースで、剰余金の水準を決めるべきです。

支出を減らさないの?

剰余金の水準で売上に当たる受信料を減らすようですが、人件費などの支出を減らして、受信料の値下げに還元するという話が出てこないのが不思議です。
(報道にバイアスがかかっている可能性はありますが)

支出の水準は減らさないと言うのも、いくら受信料が値下げされると言っても、なかなか受け入れられないのではないでしょうか。

例えば、スクランブル放送にして、見たい人が見られるようにし、収納費を圧縮するとか、人員の適正化を図ると言ったことがあってもいいと思います。
(全国あまねく見られる事が大事だから、スクランブル放送に及び腰のようですが、いまどき、テレビを見る人がどれくらいいるのでしょうか?)

まとめ

今日は、NHKの受信料の値下げについて考えました。

まだ、値下げは報道段階で、確定した情報ではありませんので、法律案の内容を見ないと詳細は分かりませんが、NHKの決算書を見ながら、ニュースを見ると、いろいろと見えてくるので、ぜひ、NHKの決算書をご覧になって、想像してみるのも面白いですよ。

編集後記

今日の未明、リバプール対マンチェスター・ユナイテッド戦が行われ、ゴールレスドローに終わりました。

リバプールが攻める時間が長かったですが、決定機という意味では、ユナイテッドの方が多く、引き分けが妥当かなと思いました。

そして、他会場の結果、いつの間にやら、4位まで順位を下げてしまいました。

まだ、半分を終えた段階なので、タイトルについて語るのは早いですが、今シーズンは、最後までもつれそうです。


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