みなさん、こんにちは。クラウド会計専門公認会計士の中田裕司(なかたゆうじ)です。
日本で一番多い3月決算の会社は、そろそろ2020年度決算の着地が見えてきた頃だと思います。
ところで、みなさんは、どういう視点で、企業の決算書を見るでしょうか?
売上高、営業利益、粗利率(=売上総利益÷売上高)、総資産利益率(=当期純利益÷総資産)など、様々な指標を見られると思います。
これらの指標も大事ですが、わたしは、販売費及び一般管理費(以下、販管費とします)に注目しています。
というのも、販管費に注目すると、会社の戦略が見えてくるからです。
今日は、販管費に注目し、会社の戦略が見えてくることを紹介します。
販管費って何?
そもそも、当たり前のように販管費と言っていますが、販管費には、人件費、減価償却費、広告宣伝費、交際費、旅費交通費など、いろいろと種類はあります。
今は、営業部門のコスト→販売費、管理部門のコスト→一般管理費くらいと認識していただければ十分です。
(ちなみに、メーカーの工場部門やソフトウェア開発企業の製造コストは原価です)
販管費で注目すべき項目は?
いろいろと種類のある販管費ですが、会社の戦略を見る上で注目すべき項目は、
- 人件費
- 広告宣伝費
- 研究開発費
です。
人件費
人件費は、主に、役員報酬、給料、賞与、退職金、ストックオプション費用などです。
優秀な人材獲得を通じて売上げアップを狙っていれば、人件獲得費用がかさみ、人件費は多額になりますし、過剰人員を整理(=リストラ)した場合には、人件費は減少します。
(最近では、GAFAに対抗するために優秀な人材を獲得したい企業が多額の給料で人材を獲得するといったニュースもありましたね)
広告宣伝費
広告宣伝費は、主に、テレビや新聞などのメディア広告、インターネットでのリスティング広告、パンフレットやチラシ作成にかかる費用などです。
メディアへの露出を増やして、世間に認知してもらったり、Google検索で検索画面の1ページ目に表示されるために、リスティング広告を打ったりするなどして、広告宣伝費を増やすこともあれば、ある程度、世間の認知を獲得したら、広告宣伝費を減らします。
(近年、上場したIT企業(メルカリ、ラクスル、freeeなど)は、広告宣伝費を多額に費やす傾向にあります)
研究開発費
今、販売している商品・サービスがいつまでも売上をあげられるわけではないので、新商品・新サービスを開発して、次の売上のタネを探しています。
例えば、製造業(特に自動車、電機、製薬)だと、研究開発部門で新商品の開発をしていますし、◯◯テック系だと、新サービスの開発をしています。
研究開発費は、次の売上のタネを探す費用とも言え、企業の今後を予測するのにうってつけです。
研究開発費の占める割合が多いと、現状に甘んじず、将来を見据えて売上を増やす努力をしていると見られる傾向にあります。
(業態によって研究開発が不要な業態もありますので、研究開発費がないからと言って、売上を増やす努力していないということではありません)
販管費の見方
販管費に限った話ではないですが、単年度の決算書を見ただけでは会社の戦略はわかりません。
有価証券報告書の財務諸表では2期分が開示されますが、最低3期分は並べてみないと、傾向はつかめませんので、3期分の損益計算書を並べて比較しましょう。
(下記に有価証券報告書の資料を載せていますが、2期分しかないので、もう1期分は検索して確認して頂けると幸いです)

また、総額だけではなく、売上高に占める割合や販管費全体に占める割合を見るようにしましょう。
なお、企業によっては、売上の〇〇%を広告宣伝費や研究開発費に費やすことを公表している企業もありますので、そうした企業の売上の推移がどうなっているかを見るのもいいでしょう。

2020年6月期有価証券報告書より

2020年7月期有価証券報告書より

2020年6月期有価証券報告書より
まとめ
今日は、販管費に注目して、会社の戦略を見ていく方法を紹介しました。
販管費を見ることで、会社が何に注力しているのか、あるいは、注力しようとしているのかを見ていくのも面白いですよ。
編集後記
収益認識会計基準の本を買ったのですが、正直、いろいろありすぎてどこから手を付ければいいのかという感じです。
(3月決算企業は適用までもうすぐだけど。。。)
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